もはや学術的にはあまり意味のない、時代遅れの分類上の用語。
概念としては、もともとは淡水に沸いてくる微生物たちの総称的なもので、今で言う繊毛虫や鞭毛虫など原生動物でくくられがちな奴らから、果ては単細胞の小型藻等までもを十把ひとからげにしたものであった。
120年前の古~い図鑑には、いろんな微生物が、たとえばゾウリムシもアメーバも単細胞の緑藻類もInfusoriaとしてくくられて紹介されてたりする。今の分類体系からすれば、ドンブリ感は否めない。そんな、古い概念。
この用語を使い続けるのは、JRを国鉄と呼ぶのと同じくらい微妙な気がするのだが。
「インフゾリア」という種名の生物がいるわけではない。
かつて「インフゾリア」として分類上まとめられていた生物がいる、ということになる。
現代でも根強く用いられているのはアクアリウム業界くらいだろうか。
稚仔魚の餌としてゾウリムシ等の微生物が有用であることは、(経験則的なものも含め)昔から知られていた。
そういった微生物を昔はインフゾリアと呼称していた。
で、アクアに関連する微生物をインフゾリアと呼称することが一般化し・・・それが今も根強く残っているようだ
いまや間違った用法ではあるものの、いまさら修正のしようがないアクア業界用語とでも考えるほかない。
しかし困ったことに、人によってその業界用語の意味するところが異なる。
ざっとブログやアクア誌を見ると、
インフゾリア=微生物全般
インフゾリア=単細胞動物
インフゾリア=細菌とカビ以外の微生物
インフゾリア=ゾウリムシなど稚仔魚の餌になる微生物たち
インフゾリア=魚に害を及ぼさない微生物
のように、捉え方がバラバラな状況。
さもありなん、もともとInfusoria自体が、昔の緩い分類体系のなかで生まれたもの。そもそもの概念が怪しいような気もする。
その概念を、現在の分類体系が(おおよそ)確立した状況下に持ってきて整合を取らせようとすると、分類学に疎い諸氏はやや混乱するしかなく、研究者も苦笑いするしかなかろう。
インフゾリア=infusoriaの和訳は浸滴虫類、あるいは滴虫類ということになるが、アクアの世界ではこの概念が欧米経由で導入されたせいか、はたまた横文字でハクをつけたかったからなのか不明であるが、和称を唱える人は少ない。
さて、水面に生じる白っぽい膜、通称「油膜」を、そのインフゾリアだと説明する人も多い。
ちょっと400倍で撮ってみた。
小さい、長楕円のツブツブに埋め尽くされてる。
バクテリアの塊だよな。これ。たぶん。
もちろんツリガネムシがたまに交じってたりよくわからない繊毛虫も多少ウロウロしてたりはするんだが、膜自体はバクテリアだよね。バクテリアたっぷりのバイオフィルムっていうべきか。
油膜を食う魚がいるけど、細菌の塊と多少の動物プランクトン(ツリガネムシはプランクトンじゃないように思うけど、まあいいや)を食ってるってことだよね。
俺らも発酵食品とともに細菌食ってたりするわけだから、何か栄養になってるか、整腸作用があるんだか、何かしらメリットがあるんだろうな。
そういえば、その「油膜」なるものを粉々に砕いて微細にして、かつ少なくして水面に浮かべて様子を見てると、もとの油膜の破片から同心円状にまた広がってくるんだよな。
まさに細菌が、培地の上でコロニー創っていくのと同じような感じで。
どんな細菌なのかはわからないけど。巷では鉄バクテリアって噂だが、水槽に出てくる奴が本当にそうなのか検証してる奴はいないし、個人で同定するのも難しいし。ま、細菌の塊ってレベルで考えておくしかないわな。
水面にいるってことは、好気性の細菌なんだろうけどね。